目覚ましい成長を遂げていたベンチャー・リンクに何が起きたのか?
林:天童社長、そのようにして次々と多くのブランドをヒットさせてきたベンチャー・リンク社が、様子がおかしくなっていったのですよね。
天童:はい、一部上場した辺りからです。倍、倍というような形で利益が伸びていき、それをさらに増やす方向の経営計画を立てていたのですが、その時点でかなり無理が出てきていました。ベンチャー・リンクに入社している社員達は基本的に皆「独立したい、将来会社を経営したい」という人間ばかりで、昔は本当に不夜城といわれて、夜の何時になっても電気が点いているぐらいでした。そのような形で猛烈に働く人達が良い商品を販売していたわけですから、会社が拡大するのは自然な流れです。しかし途中から、新しい商品や商材というものを次々に世に出していかなければならないというプレッシャーの中で、ちゃんとパッケージができていない未完成のものも販売するようになってしまいました。必ずうまくいくだろうと頭の中でロジックを組み立てた上で販売したものが、やはりビジネスをするのは人間ですから、予想した通りには店舗で売上が伸びないものが出てきて、儲からない加盟店がかなり増えてきたのです。
林:例えば、牛角やかつや、ガリバーなどは多くの方に加盟していただいて、うまくいったということですよね。
天童:100パーセントとは言えないまでも、成功率は高かったです。
林:しかしまだ未完成の商材まで加盟店集めをしてしまったのですね。
天童:はい、まだ知られていないものを、これはうまくいくだろうと考えて販売していました。
林:それもいい加減な気持ちではなく、良い結果が出せるだろうと考えた上でのことですよね。そもそも、うまくいくかわからない未完成なものに加盟させていった理由は何でしょうか?
未完成な商品を販売してしまう理由とは何か?
天童:まずは、成功するだろうと予想していたということです。コンサルタントの視点で見ると、「AとBがあって、その二つを足したらABになる、というようなロジックがしっかりしているから、これなら成功するだろう」という風なことを言われると、「これはうまくいくだろう」と感じるのですが、実際に販売してみると予想通りには利益が伸びませんでした。
後で振り返ってみると、例えばうまくいっている店舗を増やすということであれば、その店舗の真似をする形で、ベンチマークしてビジネスを進めていくという方法が考えられますが、ベンチマークできるような良い結果を出している店舗がなかったのです。想像の中で「うまくいく」と考えているだけで、実績が伴っていないのですから無理もありません。そういう意味ではベンチャー・リンクのスーパーバイザーは非常に優秀だったと思いますし、加盟店のために本当に一所懸命頑張っていましたが、それだけ頑張っても利益が上がらないような状況にもなっていました。
林:結局はビジネスモデルの問題で、スーパーバイザーではどうしようもない部分があったということですか。
天童:そうだと思います。
林:なるほど。「ベンチャー・リンクのSV部隊はすごかった」という噂を聞いたこともあるので、次回その辺りを伺わせてください。